7 騎馬旅行-1

小舟を宿として漢江を遡り、景勝に目を楽しませ、異国の憂い晴らしてきたが、何日も船暮らしをしていれば船にも飽きる。
今度は朝鮮馬に跨り、陸路金剛山を目指すことにした。

朝鮮子馬

出発に際して、私は朝鮮の馬について説明をしておこうと思う。
体躯は矮小、咬むは蹴るはで少しも人に慣れていない。 洋式の鞍を置けば、子供に大人の服を着せる如く、腹帯など無論長すぎる。
ただ驚くのはその運搬力である。
飼料といえば藁の根くらいなものであるが、200キロもの荷物を苦も無く背に載せ、毎日30マイルほども運搬する。

 
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馬一頭に馬子一人が必ず付くのも珍しい習慣だ。 ペルシャあたりでは馬子一人が5頭以上の馬を引くものだが、まだ野獣の域を出ていない朝鮮馬では仕方ないのであろう。
その上、馬子が馬をかわいがってよく育てようという意思もなければ、馬が馬子に慣れ親しむそぶりも見られない。
道中は馬と馬子の喧嘩が絶えない。
私が乗ったのは栗毛の逞しい4尺におよぶ優れた馬で、1時間に4マイル進み、野道であろうと山道であろうと、 突かれた様子を見せなかった。
さればこそ、1匹50シリングの値打ちがあるそうだ。

元山街道

出発時はあいにくの雨だった。私の愛馬は様子の変わった乗り手を嫌って、極力抵抗した。 土砂降りの中を泥水を蹴立てて元山海道を進む。
脇は禿山と田んぼが続いていた。
朝鮮人は雨の降ることをひどく恐れており、街道には人影がまばらで、出会ったのはタバコや干し魚、海藻やらを運ぶ苦力の2,3であった。

水車小屋

たくさんの水車小屋があった。「水車」ではない。跳ね棒の一端に杵をつけ、他端は木を削って船状にしたものである。 船に水を引き入れると、重さで船が下がり、水がこぼれると杵が打ち下ろされるという、我々の大昔の先祖が使ったような幼稚な機械である。
これらが緩やかに長閑な音を立てていたのは、田舎の風情としてとても面白かった。
この水力米搗き機のないところでは、女が杵を突き、歌を歌うのが常であった。
私は肌までじっとり濡れた。馬は泥道を音を立てて急ぐ。なだらかな禿山の麓、まばらな並木に沿って道は右に折れ左に曲がる。
さながら日本で見た光景である。

雨に濡れて宿屋に泊る

こんなに降られては風情ある風景に足を止めるわけにはゆかぬ。
ただ先を急ぐ。急ぐうちに午後早く、ある村に着いた。
伴の馬子は馬を控えて、まだ日は高いが休みなしの道中に人も馬も疲れました。 今夜は是非この村の旅籠に泊りなさいませと勧めて動かない。 私はここに朝鮮旅館の第一夜を経験することになった。

最終更新日: 2013-12-04 21:29:02

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