6 自然の美-1

流れる水は去年の雪

春光天地に冷たく、春風山河をたどる。空は澄み土地肥え鳥歌う。私はこの大自然の懐に抱かれて、なお漢江上りを続けている。
流れる水は去年の雪、あるいは淀んで淵となり、あるいは波立つ早瀬となり、支流は河畔の田畑を潤し、遡れば谷川となり、峰より落ちる滝となる。

 
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4月の末頃、私は七つの瀬と七つの淵を越して、丹陽付近まで進んだ。
樹種はだんだん変化しかつ増加し、山様水態は私の研究心をそそるほどに面白くなった。
たとえばアカント、バナクス。リシニフォリア、ユーオニムス。胡柏桃または桑に寄生する木、ルス、セミアラタ。 ルス、フェルニシフェラ。松。柏、アビエミクロスヘルマ。アクチュニジ、アブエラリア。エレアグヌス。 胡桃。榛木。樺。楓。エルム。その他欅の類も種々見ることができる。
花卉には金仙花。金鳳毛。スミレ。アコナイト。レデスリッパー。ホークウィード。カモミール。紅白の タンポポ。ウイゼリアス、山芍薬、マルタゴン、山百合、ゼンチアンス、ピンクス、ピレー、スイカズラ、イーリスロッシー、その他にはなおたくさんの種類がある。

湛える淵は翡翠を溶く

丹陽を出ればここはもはや漢江流域中もっとも美しい自然のある場所となる。
幾万年の風と水と闘い続けた石灰岩は河を挟んであるいは広くあるいは狭く、毅然といて立ち、猛然として走り、ところどころ岩壁のないところには静かな谷が現れ、 奇山がそびえ、森と林が交わり、峰々ははるかに重なり合って一嶺ごとに薄れてゆき、はては夢の国へと消えてゆく。
磐石のつく出すところでは川の水が湧然とし勢いをまし、急に奔流となり怒涛となり、やがて深い沢となる。
その色は翡翠の溶いて流したようである。水は野薔薇の咲く岸辺や白砂の汀に打ち寄せ、滔々と音を立てて流れてゆく。
空気は澄み渡って、風の音さえ心地よい。どこにも気兼ね遠慮のいらぬ若衆の歌もうれしく、蜂谷トンボの多さも邪魔にならぬ。

淵を廻る万様の厳

漢江の自然美は丹陽の上流においてその極点に達する。私が今まで見た中で最も麗しいものであろう。
水は湾形の淵となって紺青をみなぎらせ、淵をめぐるのは千態万様の峻壁。その背後には青葉若葉の野が続く。 野に点在するのは絵になる農村である。

松の趣

これらの自然界にさらに一段の趣を与えるのは松の木である。 水に臨み、岩に寄り、野に連なり、特に里の人が傘松と呼ぶものは、大きな岩を柄として傘を広げたような形で生えている。
紺青の湾に船を乗り入れれば、左右に並ぶ金字塔型の岩があって、アンベロピス、ヴェネチアナがその上に生えており、麗しい曲線を描いている。

よく耕された田畑

景色に見とれて、ついその方面ばかりに筆を走らせてしまった。気を付けてみると私が今船を止めている場所は 岩や松屋白砂や文人墨客のみ喜ぶところではない。
野より谷、谷より丘へ巧みに耕されている。旅人は往々にして朝鮮の農法の幼稚であること、土地が痩せていることを書くが、 私が詳しく観察した漢江流域は、決してそのように失望する所ではない。

将来恐るべし

欧米のような進歩した農機具こそ使用されていないが、畑は深く耕され、畔は正しく整理されている。 しかし作物は未だ品種改良されておらず、イギリスで見るような優良なものは見られない。
麦はまさに穂を出して熟しつつあるところだが、その高さは6インチしかない。
しかしながら、気候といい土壌といい申し分ない国柄である。
米、豆、タバコ、麻、棉等はみな良くできる。
もし農民をよく指導し奨励したならば、将来は優等な作物を多量に産することになるだろう。
どこの国にこのような有用植物を同一地域で産するところがあるだろうか?実際に私は驚いた。
この国の将来を侮ってはいいけないと感心した。

最終更新日: 2013-11-30 09:11:51

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