3 京城入り-2

城壁は長蛇のごとし

高所に登ってこの市街を望むとき、目はもっぱら城壁を追うことになる。
南山の嶺北漢の峰、谷を渡り森を超え、あるいは隠れあるいは現われ、長蛇のごとくこの中世的な街を取り巻いている。
その高さは23から40フィート、矢隙間銃眼がところどころにあり、要所には関門を置いている。
関門は8つ。1層または2,3層の楼を門上に建て、扉は太い鉄鋲を叩き込み、巨大な閂で固めている。
日の出に開け、日没後は閉じるなど、用心堅固にできている。
関門には名がある。それぞれ道徳上の明言を選んだものである。

 
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市街の一端

穢きこと、臭きことで世界一はこの京城であろう。
2階建ての家を作ることは許可されず、もちろん3,4階建ての建物は存在しない。
このため、25万人の市民は、地上に瓦または藁を並べ、その下に潜り込んで生活 −というより不潔な道路に蠢動していると形容するべきだろうか。
その道路は広いところでも2頭の馬を並べることはできない。狭いところは一人の人間が通るのが精いっぱいである。
路傍には悪臭を放つ側溝があり、路面は垢だらけの子供と狡猾な犬に占領されている。
溝の上にささやかな棚を組んで、物を売っている人がたまにいる。棚の上には種々の小間物や毒々しく染めあげた 菓子を並べ、たまに来る客を待っている。
すべて買い占めたところでたかだか1円そこそこの代物であろう。

オンドル家屋

家屋は低く、軒を突出し、壁には泥を粗末に塗っており、これらは市街に美観を添えてはいない。
地上から34尺のところに紙張りの窓がある、オンドルの煙に燻されて、擔、柱、壁みなすこぶる汚れている。
オンドルとは朝鮮特有の暖房装置で、四方の門から市街へ牛によって搬入される大量の松葉は、みなこのオンドルの燃料となるのだそうな。
この煙に漂う夕暮れにこの街を散歩しようものなら、松の薫り高き濃霧に襲われたような感じがするのである。

小さな商店と商品

商店と称するものはあるのに相違ないが、多くは店頭10円内外の品物を羅列しているに過ぎない。
もし京城の商店の特徴をいうのであれば、貧弱無価値の一言に書き記すことができる。
大商人は街路の十字路を中心に集まっているが、それすら店中に立って両腕を伸べたらすべての商品を掴めるくらいの小さな販売店に過ぎない。
商品を挙げてみると、棉、草履、竹の笠、劣等なる陶磁器、蝋燭、櫛、硝子の数珠、煙管、煙草入れ、タンツボ、 骨像メガネ、紙類、枕、扇、硯、鞍、洗濯棒、干し柿、毒々しく染め上げた菓子、10銭洋灯、 懐中鏡のごとき安価の舶来品など。
このほか、高価なものと見えるのは、銀象嵌入り鉄製小箱、真鍮製食器またはその他の器具、青貝摺りの漆器、 刺しゅう入りの絹織物(ただしこの意匠技術は共に幼稚)などがある。

箪笥町の製作所

外国人が箪笥町(現在の武橋町)と名付けた町がある。
その町では箪笥手箱等のみを製作している。
ここでの製作品は、あまり大きなものはないものの、誠に綺麗で、胡桃、楓、モモなどの材を使い、真鍮の金具、真鍮の錠前などいかにも面白い。 朝鮮人の家庭の飾りつけにも、外国人の部屋においても結構なものである。
個人の家庭を覗いて目に触れるものは、まず長煙管と煙草入れ、椀に小鉢、米びつ、水甕、マッチ箱、金入れ、染粉、 松の実、米、黍、トウモロコシ、豌豆、大豆、草履、布や馬の毛で作られた帽子、綿花等である。

最終更新日: 2013-11-19 05:33:19

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