3 京城入り-1

麻浦までの船路

仁川より漢江を遡ること56マイル、京城の咽喉元、朝鮮第一の河口と呼ばれる麻浦までの航路は、思えば難儀な旅であった。
漢江は江原、忠清両道の水を集め、京城を横切って黄海にそそぐ半島第一の大江であるけれども、惜しいかな水深は浅くて大きな船は通れない。
しかも干潮の折には急流となって船を押し戻すほどの勢いがあり、乗船した小型の蒸気船はなかなか川を上らなかった。

 
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船は浅瀬に乗り上げてしまったため、付近のサンパンを呼んで救援してもらったのだが、集まった人々の怒号叫喚非常な騒ぎである。
予定の時間を遥かに過ぎて麻浦に着いた時には、空腹と疲れと不愉快な記憶が容易に消えない状態であった。

京城までの悪道路

麻浦にはイギリス総領事ガードナー氏が親切にも出迎えてくれた。
上陸してみると驚いたことには道路がまた酷い(厳密に言えば道路とは言えない)。この道路を輿に載せられて進むことになった。
領事は護衛の格好で朝鮮馬に鞭を入れる。いやはや賑やかなことだ、6人の輿丁は大声で笑うやら喋るやら、叱るやら、 旅人を驚殺しようととしているかのようである。
かつて造営されたわけでも修理されたわけでもない道路は、平坦なところは一つもなく、極端に広かったり狭かったりしている。 もし路上に尿があれば人はそれを避けて畑に遠慮なく踏み入れ、やがてそこが新たな道路となる。 誠に屈伸自在の道である。

風光すこぶる面白い

しかしながら、6人の輿丁がいくら騒いだといっても、天地は悠々として旅情を慰める。 白い砂原、なだらかな峰、緑の松、墓所の石人ことごとく静かである。 かやぶき屋根の家の中から白衣の人が浮かぶように出てくるのも面白い。
太くもない鋤を4,5人で使う音頭の声も誠に穏やかである。
しばらくして、領事夫人とご息女は輿で、そのほかの領事館員たちが馬でやってくるのに出会った。

出迎えの人々

気が付けば、ここはもう京城の城外である。
高く石を築きあげた城壁は、壊れているけれども延々と続いている。 2層楼の門も見える。門をくぐればそこは京城の市街である。
市街は不規則に縦横に走っている。輿は左右に道を折れ、ようやくイギリス公使館へたどり着いた。

京城の風景

イギリス公使館に続く丘にはさらに高くロシア公使館が聳え、市街を挟んで向こうの山の中腹には日本公使館が人の目を引く。
市街の中央に高く天空を削るのはフランスの教会堂である。
この協会は、かつて大院君が政権を握っていたころにキリスト教徒の虐殺があり、その殉教者たちにために建てられたものである。

私はいろいろなものを見た

私は宮殿も、裏町も、貧弱で不細工な建築装飾も、無為無能の群集もまれにみる行列も(それがまた珍妙部類の行列である)、 不潔な生活状態も、その他さまざまな風俗習慣を見た。
人口25万を擁し、世界有数の都市のひとつともいえる京城。その姿を私は今まさに見ている。
城壁外は虎狼の襲来することもあるそうだ。 目を上げれば周りの山はすべて禿山で、鋭い稜線が空を切り取っている。しかし太陽が西に傾く頃になると、 山の影はコバルトに見え、誠に麗しいと感じた。

最終更新日: 2013-11-18 06:12:04

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