1 はしがき1/2

1893年(明治26年)の冬、私は朝鮮旅行を思い立った。
当時英国人は朝鮮の名さえ知るもの少なく、その位置についてなど皆目見当がつかぬ人ばかりであった。
ある人は赤道付近だといい、ある人は地中海にある、またある人はクレタ島海中の一小島であるといった。
白雲万里を隔つというが、はるかに山海2000里の見当違いをしている。
イギリスにおける教育ある夫人がかくのごとき知識であるとは実に意外と感じた。

朝鮮民族の成形

朝鮮とは、紀元前900年(我が国の紀元前240年)アッシリアの地理学者、コルダッドベー氏によって、西洋に紹介されている。
その原住民はいかなるものであったか、門外漢にはわからぬが、紀元前1200年ころ、箕氏が中国の文化を輸入したころにはすでに 相当多数の住民がいたはずである。
また、中国、満州、日本から、少なからず移住民が移入したことは地理上推定することができる。
すなわち、現在の朝鮮人が幾多の異人種を祖先としているのは間違いないと思う。
ただし彼らの社会は独特の発達を遂げてきたものか隣接地の住民または日本人とは習慣著しく異なっていて、特に服装に関しては異彩を放っている。
血液は種々混合しても、風俗は固有のものを伝えてきたものとみえる。

朝鮮人の容貌

朝鮮人の容貌を紹介する。まず鼻はまっすぐに鼻線が通っている。ただし、鷲鼻式に曲がっ根が張って、時には獅子鼻がある。
毛髪は黒くてまっすぐで縮れ毛などはみられない。赤かこげ茶の髪は、すすを油でこねたもので染めると聞いた。
髭は時に立派なものもあるが、概して貧弱、風采としては物足りない。唇は広くて厚く、、締まりがない。
しかし、上流の学者または志士の階級はさすがに引き締まったものである。
瞳は黒く、顎骨秀で、眉毛は目の上一文字に網布で締め上げ、人となり聡明であると思わせる。

意思の人たるより感情の人たるを示す

言い換えれば朝鮮人の容貌は意思の人たるよりは感情の人なるを暗示している。世界の優等民族に列するものであろう。
体格は上等だ。身長平均男は5尺4寸(女は不明だが、男よりずっとちいさい)もって、手足ともに白く、小さく、品よくできていて、爪の形も愛らしい。

坦軍と貴族

男は驚くほど強壮で、坦軍と称する労働者群のごときは100ポンドの荷物を軽々と背負って運搬するほどである。
そして貴族の歩き方は悠々として騒がず、聞けば子供時代から歩き方を教え込むのだそうである。
政府の調査に間違いがなければ、総人口は1200万ないし1300万人。女史の数は男子よりわずかに少ないそうだ。

語学が達者

朝鮮人の語学に堪能なることは外国教師が舌を巻いている。話すも聞くも進歩が目に見えて、発音の具合も中国人あるいは日本人よりはるかに上手である。
ただし、東洋一流の猜疑心が深くて、狡猾で、嘘つきで、正直とか信用とかを知らぬ国民だとの噂がたかい。

朝鮮の気候

朝鮮半島の気候は寒暑風雨乾湿共に当を得ておそらくは世界中における最高公的の健康地であろう、在鮮の外国人は風土病に犯されたためしがない。
生まれた子供は悉く達者に育ってゆく。78月および9月の中旬までは夏で暑いし雨も降るが、周囲の海洋に緩和されて、決して凌ぎ難きものではない。
いつでも愉快に戸外活動ができる。
その他の9か月間は常に空が朗らかに晴れわたり、特に冬は大気が静止して風が吹かず、雲一つなく、心地よい寒さと氷と霜と、夜の星空とは忘れがたい印象を与えた。

工業は幼稚

工業は幼稚で、もし工業と名づけるのであれば製紙業しかない。美術は皆無といってよろしい。

やはり専制制である

朝鮮は1392年来李王家の統治下にあって、世襲の王権は最近日本の指導によってなお、発動の態様に繁華が現れたけれども、なおも絶対的の専制で、 「天皇意思即法律」なる欧州中世の法律格言そのままに固執している。
はるか昔より王権の上に王権ありと伝えられた中国の宗主権は、1895年に国王によって否定され、中国も下関条約によって朝鮮の完全な独立を承認 したので、朝鮮は内閣以下の政治上の諮問機関は一応近世式の体裁を整えるようになったが、その質実は専制国である。

収入の大部分は関税

政府収入の大部分は関税収入で、清国海関から派遣された官吏の手によって忠実に徴収されている。その他は租税収入で、上田1結6円、山地1結5円、 市街地は一戸につき60銭を課税される。
特に重税と思われるのは人参で、1斤につに16円の税を納める。

朝鮮の開港

朝鮮は1876年(明治9年)までは世界の一隅に門戸を閉じて隠居を楽しみ、あえて他国に交際を求めなかった。
その年に日本と修好条約を結び、次いで中国、西洋諸国を条約を結んだ。
それ以来、京城、仁川、元山、釜山は対外貿易港となり、続いて木浦および鎮南浦が開港した。 京城には列強使臣が集って事務を行っており、今では西洋風の公使館が矮小不潔な民家と相対してすこぶる偉観を呈している。

最終更新日: 2013-11-14 05:13:02

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